解決事例

事例004脊柱の変形障害(後遺障害等級第8級)を残した被害者につき、後遺症による自覚症状は痛みであって可動域制限はなく、痛みは経年による軽減があったものの、粘り強い交渉により、後遺障害逸失利益の増額に成功した事例

ご相談内容

ご相談内容

依頼主
相続人:Dさん(10代・男性)

加害者が運転する普通乗用自動車が道路脇の電柱等に衝突し、同乗中の福岡県朝倉市在住の10代のDさん(男性)が、第1腰椎椎体骨折、第2腰椎破裂骨折、顔面打撲・挫傷等の傷害を負いました。

Dさんは、腰椎後方除圧固定術を受け、リハビリを継続しましたが、脊柱の障害を残しました。

弁護士の活動

弁護士の活動

当事務所は、Dさんの後遺障害診断書等の医証を獲得し、後遺障害等級の申請を自賠責に行い、自賠責より、第1、2腰椎破裂骨折後の脊柱の障害(1個以上の椎体の前方椎体高が減少し、後彎が生じているため、「せき柱に中程度の変形を残すもの」)として、後遺障害等級第8級相当に認定されました(詳しくは、「脊柱の障害」を参照してください。)。

そして、当事務所は、上記結果に基づき示談交渉を開始しました。

解決結果

解決結果

本件事案における主な争点は、後遺障害逸失利益でした。
後遺障害逸失利益について、加害者側は、「(Dさんの残存症状より)労働能力喪失期間は就労可能年齢(67歳)までではなく、10年とするのが相当」と主張しました。確かに、後遺障害診断書上、Dさんに可動域制限はなく、自覚症状は痛みであって(しかも、痛みは経年によって軽減していました。)、同障害のために、特定の職業あるいは業種への就職を断念したとか、特定の作業を行うことができないなどの事情はありませんでした。しかし、せき柱に中程度の変形を残すものが後遺障害として認定されているのは、せき柱の保持機能あるいは支持機能を害されることによることからすると、可動域制限などの運動障害がないことをもって、ただちに労働能力喪失が低いとまではいえません。

そのため、当事務所は、訴訟手続によって解決することを模索しましたが、本件事案では示談交渉よりも賠償金が下がり(示談交渉時、加害者側からの主張はありませんでしたが、好意同乗による減額も十分考えられました。)、解決も長引く可能性があること、また、Dさんも示談による解決を希望したことから、適正な賠償を受けるため、加害者側と粘り強く交渉を継続しました。

以上より、加害者側が、Dさんに対し、既払金のほか約2566万円を支払うとの内容で示談が成立し、結果として、大幅増額を実現することができました。

弁護士のコメント

弁護士 北島 好書

脊柱の障害は、認定基準がある程度具体的ではありますが、その前提となる脊柱の変形や運動障害の原因(器質的変化)の有無や、その障害が残存したことによりどの程度労働能力に影響が生じるのかが争われる例が多いと思われます。

そして、後遺障害による逸失利益を認定する上での前提となる労働能力喪失率は、自賠責保険の取扱いに拘束されるものではなく、後遺障害の内容と程度、被害者の年齢、性別、職種、転職の必要性、事故前後の稼働状況などを総合考慮し、当該後遺障害により労働能力がどの程度喪失されるのかを具体的に検討してなされるべきものです。

そのため、本件のように、被害者が若年者で後遺症による自覚症状は痛みであり、可動域制限がない事案においては、痛みが経年により軽減することから、労働能力喪失率については、期間を分けて、漸次逓減する形を採用されることも多く、訴訟手続きにより、かえって賠償金が下がることもあり得ます。

以上のとおり、紛争解決の手段として、必ずしも訴訟手続が最善であるとは限りませんので、事案に即した適切な解決ができるよう、弁護士に相談して頂きたいと思います。

文責:弁護士 北島 好書

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