解決事例

事例010高次脳機能障害等の障害(後遺障害等級第5級)を残した被害者につき、粘り強い交渉により、将来介護費を考慮した増額に成功した事例

ご相談内容

ご相談内容

依頼主
Jさん(30代・男性) / 職業:会社員

福岡県在住の30代会社員のJさん(男性)は、原動機付自転車を運転し、信号機による交通整理の行われていない十字路交差点を直進していたところ、非優先道路から優先道路に直進進入しようとした普通乗用自動車に衝突され、脳震盪、後頭部打撲症、右第3腰椎横突起骨折、左上眼瞼裂創、左眼球打撲等の傷害を負い、治療を継続しましたが、高次脳機能障害等の障害を残しました。

弁護士の活動

弁護士の活動

Jさんは、既に、自賠責より、脳外傷による高次脳機能障害について「神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、特に軽易な労務以外の労務に服することができないもの」として後遺障害等級第5級2号の認定を得て(詳しくは、「高次脳機能障害」を参照してください。)、加害者側から示談提示(約1996万円)を受けておりましたが、その金額が妥当かどうか分からないとの理由で相談に来られました。

加害者側の提示額を確認すると、殆ど全ての費目がそれぞれ裁判基準よりも低額でした。そのため、当事務所は上記認定結果に基づき示談交渉を開始しましたが、加害者側は将来介護費を認めなかったため交渉は決裂しました。

その後、当事務所は、加害者側は民事調停の申立を受け、これに応じました。

解決結果

解決結果

本件調停における主な争点は、将来介護費でした。

加害者側は、自賠法施行令別表を前提に、介護を必要とする後遺障害として明示されているのは1級及び2級のみであり、後遺障害等級第5級2号ではその必要性は認められない旨の主張を行い、また、本件事故後にJさんが自動車を運転した事実をもって、将来介護費を否定しました。

これに対し、当事務所は、医療記録等を詳細に検討し、Jさんの妻が日常生活に対して適宜その行動を看視、声掛けを行っており、また、Jさんの後遺障害(高次脳機能障害)は重篤であり、日常生活のほとんどの場面において、看視、声掛け、適宜の介入等の介護(付添)が必要となる旨の主張を行いました。

なお、当事務所は、訴訟手続によって解決することを模索しましたが、本件事案では、Jさんが示談による解決を希望したことから、適正な賠償を受けるため、加害者側と粘り強く交渉を継続しました。

以上より、加害者側が、Jさんに対し、既払金のほか5500万円を支払うとの内容で示談が成立し、結果として、大幅増額を実現することができました。

弁護士のコメント

弁護士 永野 賢二

後遺障害等級認定と介護の要否について、自賠責保険の基準では、1級は常時介護を要する、2級は随時介護を要する、3級以下は介護を要しないという判断となっております。しかし、近時の裁判例では、高次脳機能障害について3級以下という認定の場合でも、損害として介護費用が認定されている場合があります。

すなわち、高次脳機能障害は、身体的な問題ではなく、新しいことを覚えられない、気が散りやすい、行動を計画して実行できないといった認知障害、周囲の状況に合わせた適切な行動ができない、複数のことを同時に処理できない、職場や社会のマナーやルールを守れない、要点をうまく伝えることができない、行動を抑制できない、危険を予測・察知して回避的行動をとることができないといった行動障害、自発性低下、衝動性、易怒性、幼稚性、自己中心性、病的嫉妬・ねたみといった人格変化を特色としています。そのため、ADLとしては自立と評価され、また監視者による適切な声掛けや監視(看視)が行われることによって生活・就労が可能という評価となる場合がある一方で、例えば火の始末ができないため1人で置いておいては火災の危険がある、1人のままでは自殺してしまう危険性がある、他人による指示がなければ定期的な薬の服用ができない、感情的な起伏が大きく突然他人に怒りを向けることがあるため適宜他人が声掛けをしたりなだめたりする必要がある等の場合があり、本人や他人に危険が及ばないようにするために、監視者による適切な声掛けや監視(看視)が必要と認められる場合が多くあり、このような場合には、たとえ後遺障害等級としては3級以下の認定の場合であったとしても、介護の必要性が認められ、損害として介護費用が認められることになります。

本件のように、加害者側より、後遺障害等級が3級以下であることを理由として、将来介護費が否定されたとしても、具体的に主張立証することにより適正な賠償を受けることは可能ですので、あきらめずに、弁護士に相談して頂きたいと思います。

文責:弁護士 永野 賢二

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