事例011左膝痛及び左下肢筋力低下等の障害(後遺障害等級第12級)を残した被害者につき、労働能力喪失期間を就労可能年齢(67歳)までとして、後遺障害逸失利益が算定された事例
- 担当弁護士永野 賢二
- 事務所久留米事務所
ご相談内容
依頼主
Kさん(40代・男性)
福岡県朝倉市在住の40代会社員のKさん(男性)は、道路を歩行横断中、進行してきた普通乗用自動車に衝突され、左脛骨近位端骨折等の傷害を負いました。
Kさんは、左脛骨近位端骨折に対し、骨接合術及び骨移植術を受け、リハビリを継続しましたが、左膝痛及び左下肢筋力低下等の障害を残しました。
弁護士の活動
当事務所は、Kさんの後遺障害診断書等の医証を獲得し、後遺障害等級の申請を自賠責に行い、自賠責より、左脛骨近位端骨折後の左膝痛及び左下肢筋力低下について、「局部に頑固な神経症状を残すもの」として後遺障害等級第12級13号に認定されました(詳しくは、「末梢神経障害」を参照してください。)。
そして、当事務所は、適正な賠償を受けるため、福岡地方裁判所久留米支部に訴訟提起しました。
解決結果
本件訴訟における主な争点は、①傷害慰謝料、②後遺障害逸失利益でした。
傷害慰謝料について、加害者側は、入院中も歯科治療は可能であったとして、同治療期間を控除した額(127万円)を限度とすべき旨主張しましたが、当事務所の立証活動により、裁判所は、同治療期間を含めた額(220万円)を認定しました。
後遺障害逸失利益について、本件は後遺障害等級12級の事案でしたが、当事務所の立証活動により、裁判所は、当事務所の主張(労働能力喪失率14%、労働能力喪失期間・症状固定時から稼働可能期間の終期年齢までの全期間)を採用しました。
以上より、加害者側が、Kさんに対し、既払金のほか約766万円を支払えとの内容で判決が確定し、大幅増額を実現することができました。
弁護士のコメント
逸失利益とは、後遺障害が残存してしまったために将来得られなくなった収入のことをいいます。後遺障害はそれ以上治療を継続しても治療効果が認められなくなった症状固定の時を基準に判断するため、逸失利益が認められる期間(労働能力喪失期間)は、症状固定時から稼働可能期間の終期年齢までの全期間となることが原則になります。
しかし、本件のように後遺障害が神経症状の場合には、12級で10年程度、14級で5年程度に制限する裁判例が多くみられます。これは、相当程度の期間が経過すれば症状が改善して治ゆしてくることや、実際に症状が改善してきたことなどがその理由に挙げられています。
ただし、器質的な損傷があり、これに基づいて神経症状が発症する場合については、安易に喪失期間を限定すべきではありません。そして、本件事案においても、労働能力喪失期間は10年程度ではなく、症状固定時から稼働可能期間の終期年齢までの全期間が認定されております。
本件のように、訴訟により適正な認定を受けることは可能ですので、あきらめずに、弁護士に相談して頂きたいと思います。
文責:弁護士 永野 賢二