事例015頚部痛及び右手関節の機能障害(後遺障害等級第10級)を残した被害者につき、粘り強い交渉により、労働能力喪失率27パーセント、労働能力喪失期間を平均余命の2分の1までとして、後遺障害逸失利益が算定された事例
- 担当弁護士永野 賢二
- 事務所久留米事務所
ご相談内容
依頼主
Oさん(40代・女性) / 職業:会社員
福岡県久留米市在住の40代会社員のOさん(女性)は、普通乗用自動車の助手席に同乗中、普通乗用自動車に衝突され、マンション入口の外壁に衝突し、傷害を負いました。
本件事故後、Oさんは救急搬送され、X線上、明らかな骨折は認められず、右手関節捻挫等と診断され、加療継続するも、右手関節痛が残存したため、画像検査したところ、右手舟状骨偽関節が認められました。そのため、偽関節の手術を行い、骨癒合は得られたものの、尺側部痛はとれなかったため、TFCC損傷の診断に至り手術を行うこととなり、同手術後、Oさんはリハビリ継続しましたが、頚部痛と右手関節の機能障害を残しました。
弁護士の活動
当事務所は、Oさんの後遺障害診断書等の医証を獲得し、後遺障害等級の申請を自賠責に行い、自賠責より、右手関節TFCC損傷に伴う右手関節の機能障害について「1上肢の3大関節中の1関節の機能に著しい障害を残すもの」として後遺障害等級第10級10号に、頚椎捻挫後の頚部痛について「局部に神経症状を残すもの」として後遺障害等級第14級9号に認定され(詳しくは、「上肢・下肢の機能障害」「末梢神経障害」を参照してください。)、以上により、併合第10級と認定されました。
そして、当事務所は、上記結果に基づき示談交渉を開始しました。
解決結果
当事務所の粘り強い交渉により、加害者側は当事務所の主張を概ね認め(労働能力喪失率27%、労働能力喪失期間18年間)、Oさんに対し、既払金のほか約1018万円を支払うとの内容で示談が成立し、Oさんに満足いただける結果となりました。
弁護士のコメント
手関節には、橈骨および尺骨、手根骨3者間の安定を図るために三角線維軟骨複合体(TFCC)が存在します。TFCC損傷と診断されたときは、受傷直後は、安静、消炎鎮痛剤の投与、サポーターやギプスなどを用いて手関節を保存的に治療します。サポーターやギプスによる固定療法は、原則として3か月であり、これを過ぎても症状が改善されないときは、手術が適用されています。
しかし、TFCCは、それ自体が軟骨で構成されているので、単純XP撮影では確認できず、事故直後にTFCC損傷と診断され、上記治療により改善が得られる被害者は現実問題として一握りです。本件では、主治医よりTFCC損傷の診断を受け、自賠責も後遺障害を認定されましたが、TFCC損傷と交通事故との因果関係が否定されることも少なくないため、受傷直後から小指側の手首の痛み、手関節の可動域制限、握力低下等があれば、これを主治医にしっかりと伝えておく必要がありますし、MRI検査等によって器質的損傷を明らかにしなければなりません。
以上より、病院・検査・通院頻度等の選択を誤ると、後の賠償請求の際に不利になってしまうこともあるので、事故から出来る限り早く弁護士に相談して頂きたいと思います。
文責:弁護士 永野 賢二