事例021脊柱の変形障害(後遺障害等級第8級)を残した被害者につき、賃金センサス大学院卒全年齢平均賃金を考慮して、後遺障害逸失利益が算定された事例
- 担当弁護士永野 賢二
- 事務所久留米事務所
ご相談内容
依頼主
Uさん(30代・男性) / 職業:会社員
福岡県在住の30代会社員のUさん(男性)は、原動機付自転車を運転し、信号機による交通整理の行われていない丁字路交差点を直進していたところ、同交差点を右折した普通乗用自動車に衝突され、第6胸椎破裂骨折等の傷害を負い、治療を継続しましたが、脊柱の障害を残しました。
弁護士の活動
Uさんは、既に、自賠責より、第6胸椎破裂骨折後の脊柱の障害(1個以上の椎体の前方椎体高が減少し、後彎が生じているため、「せき柱に中程度の変形を残すもの」)として、後遺障害等級第8級相当の認定を得て(詳しくは、「脊柱の障害」を参照してください。)、加害者側から示談提示(約1763万円)を受けておりましたが、その金額が妥当かどうか分からないとの理由で相談に来られました。
加害者側の提示額を確認すると、殆ど全ての費目がそれぞれ裁判基準よりも低額でした。そのため、当事務所は上記認定結果に基づき示談交渉を開始しました。
なお、Uさんの希望により、当事務所は、示談交渉に先立ち、自賠責保険の被害者請求を行い、同保険金819万円を回収しました。
解決結果
本件事案における主な争点は、後遺障害逸失利益でした。
後遺障害逸失利益について、加害者側は、「逸失利益を算定する際の基礎収入は都道府県別の全年齢平均給与とするのが相当」と主張しました。これに対し、当事務所は、「賃金センサス男子大学・大学院卒全年齢平均賃金である633万2400円の収入を得ることの蓋然性はあった」旨主張立証し、加害者側と粘り強く交渉を継続しました。
以上より、加害者側が、上記基礎収入を考慮して、Uさんに対し、約3294万円(自賠責保険金を含む)を支払うとの内容で示談が成立し、結果として、大幅増額を実現することができました。
弁護士のコメント
後遺障害における逸失利益は、ある程度長期の将来にわたる収入の減少に対するてん補であることから、事故時の現実収入が低額であったとしても、労働能力喪失期間中にそれを上回る収入が得られる蓋然性が立証された場合には、その金額をもって基礎収入とすることもあります。
そのため、本件事案のように、事故時の現実収入が低額であっても、具体的に主張立証することにより適正な認定を受けることは可能ですので、あきらめずに、弁護士に相談して頂きたいと思います。
文責:弁護士 永野 賢二