事例026死亡した被害者につき、現実収入より高い賃金センサスの平均賃金をもって、死亡逸失利益が算定された事例
- 担当弁護士永野 賢二
- 事務所久留米事務所
ご相談内容
依頼主
Zさん(40代・男性) / 職業:会社員
福岡県在住の40代会社員の男性(Zさん)は、普通自動二輪車を運転し、信号機による交通整理の行われている十字路交差点を直進していたところ、同交差点を右折した普通乗用自動車に衝突され、救急搬送されましたが、亡くなられました。
弁護士の活動
ご遺族は、既に、加害者側から示談提示(約6839万円)を受けておりましたが、その金額が妥当かどうか分からないとの理由で相談に来られました。
加害者側の提示額を確認すると、殆ど全ての費目がそれぞれ裁判基準よりも低額でした。そのため、当事務所は同基準に基づき示談交渉を開始しました。
解決結果
本件事案における主な争点は、①死亡逸失利益、②死亡慰謝料でした。
死亡逸失利益について、加害者側は、「基礎収入は事故前年の年収、生活費控除率は35%」と主張しました。これに対し、当事務所は、昇給の蓋然性や一家の支柱であったことを主張立証し、加害者側と粘り強く交渉を継続した結果、基礎収入を賃金センサスの平均賃金、生活費控除率を30%とすることで折り合いました。また、死亡慰謝料についても、一家の支柱であること等を考慮して増額を求めました。
以上より、加害者側が、ご遺族に対し、既払金のほか約8021万円を支払うとの内容で示談が成立し、結果として、大幅増額を実現することができました。
弁護士のコメント
死亡逸失利益とは、被害者が事故により死亡しなければ得られたであろう利益をいい、被害者が生存していれば得られた収入(ないしは経済的利益)の喪失を損害と捉えるものです。この場合の収入金額は、原則として、事故前の現実収入を基礎にしますが、将来的に生涯を通じて賃金センサス程度の収入を得ることができる蓋然性が立証された場合には、賃金センサスの平均賃金を基礎収入として採用することができます。
そのため、本件事案のように、事故時の現実収入が低額であっても、具体的に主張立証することにより適正な認定を受けることは可能ですので、安易に示談をすることなく、弁護士に相談して頂きたいと思います。
文責:弁護士 永野 賢二