入院付添費
医師の指示または受傷の程度、被害者の年齢等により必要があれば職業付添人の部分には実費全額、近親者付添人は1日につき6,500円が被害者本人の損害として認められます。
但し、症状の程度により、また、被害者が幼児、児童である場合には、1割~3割の範囲で増額を考慮することがあります(赤い本2016年版下巻53頁「入院付添費について」参照)。
通院付添費
症状または幼児等必要と認められる場合には被害者本人の損害として肯定されます。この場合1日につき3,300円が被害者本人の損害として認められます。
但し、事情に応じて増額を考慮することがあります。
問題の所在
そもそも「完全看護制度」というには、それまで家族や付添人によって行われていた入院患者の看護を、看護師のみによって行うことを目的として、1950年に施行された制度です。
「完全看護」という言葉からは、医療機関の看護師によって、24時間体制で必要な看護行為全てを行ってくれるという印象を受け、現在もそのような趣旨で用いられていることが多いようですが、法律上の用語というわけではありません。
現在は、「基準看護」(患者数に対する看護師数の基準であり、これに応じて診療報酬が決まる仕組み)制度がとられ、原則として、看護は当該医療機関の看護師のみによって行われることになっており、基準看護体制の医療機関が、患者の近親者に対し付添いを求めることはありません。
完全看護とは
被害者の入院する医療機関が、いわゆる「完全看護」体制が敷かれた医療機関である場合、被害者に必要な看護は全て医療機関においてなされ、近親者による看護には医学的観点からの必要性が認められないとも思われるため問題となります。
近親者による付添看護
しかしながら、現実的にはいわゆる「基準看護」体制にある医療機関においても、24時間看護師が付き添っての看護が保障されているわけではありません。
そのため、被害者の症状が重篤であったり、または治療に対する理解が困難な年少者、高齢者であったりする場合には、「基準看護」体制をとる病院であっても、近親者による付添看護の必要性が認められる場合があります。
裁判例でも、基準看護を標榜する医療機関であっても、被害者の症状が重篤であり、医学的観点から、近親者が付添・看視する必要性があったとの理由から、近親者の付添看護費用を損害として認めたものが多くあります(東京地判平22・3・26交民43・2・455、神戸地判平28・10・27交民49・5・1304、名古屋地判平29・2・21自保ジャーナル1998・1、名古屋地判平29・10・17自保ジャーナル2013・23等)。
また、必ずしも、医学的観点から近親者の付添看護が肯定できない場合においても、近親者による声掛け、タッチングや、リハビリへの励まし、協力等が、被害者の回復に一定の効果や必要性が認められる場合もあります。
完全看護体制の病院に入院中の被害者に対する付添看護費用について、近親者による面会、リハビリへの協力に一定程度の効果や必要性があったとして、付添介護費用を日額6,000円の限度で認めた裁判例として大阪地裁平成23年7月20日判決(交民44・4・945)、被害者が入院中昏睡状態が続いていたことからすれば両親の声かけなどを必要としていたとして、父親について22.5日分の休業損害を、母親について日額6,300円×42日分の付添看護費用を認めた事例(名古屋地判平25・2・27自保ジャーナル1897・111)等があり、参考になります。
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